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金魚色の影

06/01
小さな水槽にポツリと泳ぐ
真っ赤な金魚は
いつも夕暮れを待ち焦がれている
真紅の夕陽に逢いたくて
逢えなくっても明日は
逢えると信じて待っている

ゆらゆら揺れる金魚の真っ赤な影
夕陽の瞳に映るたび
果実のように熟れて熱くなる
じぶんの姿を知らない金魚に
その鮮やかな姿を知らせたくて
夕陽は瞳を鏡にして
金魚の魂の虹色の輝きを
映して見せた

水飛沫の瞬間を追いかけて
こぼれ落ちた夕陽の紅い涙
金魚と見つめ合うほど
散らばって夕焼け空は
透きとおる真紅になる

ガラスに浮かぶ地平線を飛び越えて
あんなに遠い夕陽と光をかさね
金魚はいつも紅い陽炎に抱かれていた
夕陽と金魚の計り知れない距離は
誰にも表すことのできないほど
すぐ傍のとなり合わせ
なぜなら夕陽に逢えなくても
夕陽は金魚の心になって
いつも話しかけていた
なによりも夕陽の声を
いちばん綺麗な言霊に紡いでいたのは
夕陽を愛した金魚だったから

逢えなくても熟してゆく
ふたりの真っ赤な影と遥かな時間
かなしみから尊さに変わる涙の色
それは天に滲む金魚色の影ふたつ



******************************

金魚色の影

 きんぎょ鉢のそばには、大きな窓がありました。きんぎょ鉢に泳ぐきんぎょは、いつもひとりぼっちでした。紅い、かわいいきんぎょでした。
 きんぎょは、ひとりで泳ぎながら、いつも、窓を見つめていました。窓ガラスに滴がふりそそぐ雨の日も、窓ガラスをトントンたたく風の日も、小さなきんぎょは、窓の外を見つめていました。
 
 ある秋の日でした。夕暮れ、きんぎょは窓の外に、透きとおる紅い光を感じました。それは、夕焼け空だったのです。真っ紅なまるい太陽が、窓ガラスを真っ紅に染めていました。
「なんて きれいなんでしょう!」
 きんぎょは、はじめて会った真っ紅な太陽に、見とれてしまいました。
 ふと、窓ガラスをみると、あの真っ紅な太陽とおなじ色に光っている、じぶんの姿を見つけました。みちがえるほどの目映い真紅の輪郭が映っていたのです。
「あたしは、こんなにきれいだったんだ……」
 きんぎょは、ひとり、つぶやきました。
 けれど、夕陽は、ほんのつかのまで、窓から姿を消してしまいました。窓ガラスに映った、きんぎょの紅い影も消えてしまいました。

「太陽は、あんなにきれいに燃えることができるんだ」
 紅い太陽を見つけた日から、きんぎょの心は、真っ紅な太陽でいっぱいになりました。夕陽はきんぎょの心に紅い残照を残したまま消えてしまったのです。
「また、あえる?」
 きんぎょは、いつも、真っ紅な太陽に逢える日を、心待ちに待っていました。今度、太陽が紅い光でおとずれたら、きっと、おはなししたい。きんぎょは、そう思って、毎日、毎日、小さなきんぎょ鉢を泳いでいました。
 雨の降る日もありました、どんより曇りの日もありました。そんな日には、ぜったいに紅い太陽と逢えないことを、きんぎょは知っていました。「あいたい、あいたい」って思いながら、きんぎょは空を見つめていました。
「あの空まで、泳いでいけたらいいのに……」逢えない太陽を思い出してみては、きんぎょの想いは募っていきました。
「いつ、あえるのかな?」
くる日もくる日も、きんぎょは神さまにお願いしました。

 ある、秋晴れの日、きんぎょの心は、ワクワク、ドキドキしました。昼間の空は、真っ蒼でした。今日は、あえるような気がする……ゆっくりと時間は流れ、太陽は西の空に傾いていきました。窓の外に、やっと、やっと、心待ちにしていた夕陽が、窓ガラスの空一面に、真っ紅な光をこぼしながら、きんぎょの前に訪れたのでした。夕陽に照らされた真紅のきんぎょの姿が、窓ガラスに映りました。きんぎょは、うれしくて、小さなきんぎょ鉢を、くるくる廻りながら、いっしょけんめいに泳ぎました。もしかしたら、夕陽のそばに行けるかもしれない、そんな、気がしたからです。

 太陽は、どんどん低い空へと傾いて消えそうになっていきます。
「いかないで……あたしもいっしょにつれていって……」
 きんぎょは、消えそうな太陽を見て、こみあげる熱いもので胸がいっぱいになりました。きんぎょは、真っ紅な涙をこぼしていました。
「せっかく逢えたのに、こんなに早いお別れなんて」
とってもつらかったのです。また、何日も逢えない日が続くことがわかっていたから。
「いかないで……はなれたくないよ……」
声にならない言葉を、心でいっぱい叫びました。

 窓から、夕陽が消えそうになったとき、泣いているきんぎょに、ふと、声が聞こえてきました。
「そんなに泣かないでね。ぼくは、また、会いに来るよ。毎日、夕焼け色の太陽になることはできないけれど、かならず、真っ紅になって会える日があるから、待っていてね」
「あたし、そっちにいきたい……」
 もしも、きんぎょにてのひらがあったら、きんぎょは太陽に手をつなごうとしていたでしょう。
「ごめんね。ほんの少ししか会えないんだよ。ほんとうにごめんね。でも、また、かならず会えるよ。真っ紅な光で、君を照らしてあげるよ。ぼくのことを信じていてね。ぼくが熟すのはほんの一瞬だけど、いつも君が大好きなんだよ。さびしくないよ。」
 夕陽は、やさしい言葉を残して、窓から消えていきました――。

 逢えない日も、逢える日も、きんぎょは、小さなきんぎょ鉢を、泳いでいました。心は、夕陽でいっぱいでした。
「いつも、いっしょにいられない……」
 あの遠い空まで、きんぎょは泳いでいけないことを知っていました。
 そばにいない夕陽を想いながら、逢える日を待っていることは、しあわせなことでしたが、瞳に映らない夕陽の影を信じ続けることは、とっても勇気のいることでもありました。
 けれど、そばにいられないことよりも、もっと悲しいことに、きんぎょは気づきました。それは、愛しい気持ちが失くなってしまうこと……。いちばん大切な宝物は、夕陽を愛しく想う気持ち、夕陽に愛しいと想われる気持ち、だったのです。
 時々会って、「だいすきだよ」って言ってくれる、夕陽のやさしさだけが、信じていける支えになっていました。

 きんぎょは、真っ紅な夕陽を想って、いつも真紅に輝いていました。夕陽も、ひたむきなきんぎょのために、夕焼け色に燃えて「おやすみ」を伝えます。
 それは、また逢える、一瞬のあたたかい時間を、大切に過ごすためでした。逢えなくても、ずっと赫いハートで結ばれていくために。
 「あい」という気持ちは、命のように生まれ、やさしい心でゆっくり育ってゆくのでしょう。    

 あでやかな金魚色のように、きらびやかな夕焼け色のように、紅く、赫く……。





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